レンタル移籍がベンチャー企業のマネジメントに与える影響

Mirai Harada

株式会社ローンディール 代表取締役社長
サッカーなどスポーツの世界で行われている「レンタル移籍」に着想を得て、「会社を辞めずに外の世界を見る機会」「企業の新しい人材育成の仕組み」として企業間レンタル移籍プラットフォームを構想し、2015年7月に株式会社ローンディールを創業。

こんにちは、ローンディールの原田です。(ローンディールについてご存知のない方のために、少しだけやっていることを紹介しますと・・・「レンタル移籍」という事業をやっています。大企業の人材をベンチャー企業に出向させましょう、という取り組みです。)


普段、大企業の方に向けて、こんな育成効果がありますよ、といった話をすることが多いのですが、今日は逆の視点で、ベンチャー企業にとってのレンタル移籍という話をしてみたいと思います。

レンタル移籍を使って人材を受け入れるというのは、いわゆる社員採用やプロボノで手伝ってもらうといったこととはちょっと違う意味を持つようです。社員5人以下のアーリーステージにあるベンチャー企業でレンタル移籍を受け入れていただいたケースで、偶然かもしれないけれど立て続けに2件、ベンチャー企業側(≒経営者)のマネジメントスタイルに大きな変化があったので紹介してみたいと思います。


それは経営者の考え方として、

人材受け入れ前:自分の分身がほしい

人材受け入れ後:自分とは違う役割が大事

・・・という風に変化する、ということです。だいたい、受け入れ後2~3か月後くらいでこのような変化が現れます。


まず、レンタル移籍で人材を受け入れてもらって1か月くらい経つと、ある程度、人材のキャラクターが見えてきて、ベンチャー経営者から不満が出てくるんです。「もう少しこういう風に動いてほしい」「もっと考えを掘り下げてもらわないと、うちでは使えない」「脳みそ擦り切れるまで考えてない」といった感じで。それが、2~3か月くらい経つと「自分と〇〇さんは役割が違う、うまく役割分担してやっていくことでお互いが機能しはじめた」というコメントに変わります。


ベンチャー企業の経営者で、しかも数年間ビジネスをひたすら一人で磨いてきてある程度成果を出せるようなひとって、やっぱりオフェンスが強い傾向にあると思うんですよね。小さな隙を見つけてどんどん突っ込んでいく、みたいな。一方で、大企業にいる方はディフェンスが強い。仕組み化をしたり、論理のほころびがないかを確認したり、しっかり準備をする。この差が、最初は不満になり、のちに良いバランスになっていくんです。


相互補完的に異なるキャラクターでチームを構成する、少人数のチームであるがゆえにダイバーシティが必要・・・ということは経営者も頭では分かっている。でも、実際に事業を一緒にやるメンバー、チームをつくっていくということになると、どうしても同じ熱量で語り、同じような行動特性を持った人を欲してしまいがちです。でも、事実として自分で起業をしたわけでもなく、やっている事業に対して考えてきた時間も違うのだから、はっきり言ってそんな人はいないんです。だから、採用に失敗したり、チームが崩壊したり、そういう経験を繰り返して徐々に経営者はチーム作りを学んでいくんだと思います。


それが、レンタル移籍を通じて人材を受け入れると、少し事情が変わってくるんです。


なぜなら、それが自社の社員ではないからです。もちろん面接などをして選抜していても、ベンチャー経営者側からすると自分と合わないからって辞めさせるわけにもいかない人材なんです。一方、移籍している人材にとっても、経営者についていけないから辞めます!ってわけにもいかない。だから、直接の雇用関係よりもしがらみが多くて、なんというか、のっぴきならない関係になるんです。そうするとお互いに歩み寄って試行錯誤して、どうやったらお互いがうまく機能するかをとにかく話し合う。それが結構大事なことで、自分で採用した社員とだと、意外とできなかったりするのかもなぁと思います。


レンタル移籍を受け入れてくれたベンチャーの経営者の方々はこんな風に仰っています。

「今まで、私の考えにアジャストしてくれる人を探すという風に採用を考えていたけど、そうではなかったと気づきました。私がメンバーを自分色に染めてチームを動かしていくのではなく、私をうまく使ってくれる人が必要でした。役割をバッティングさせず、ライバルにならないようにすることが大切ですね。」

「チームプレイってこういうことか、という発見がありました。お互いの違いを理解したら、ちゃんと双方がパスを出し合えるようになったと感じます。」


これらの気づきって、レンタル移籍を受け入れている時だけ有効なものではなく、チームのマネジメントにとても意味のあることだと思うんです。

自分で採用した人材だと、期待や思い入れが強い分、経営者もそう簡単に折れられない気がします。レンタル移籍という特殊な関係であるがゆえに、半ば強制的にそういう視点を身に着けざるを得ない。もしかしたら、ベンチャー経営者のマネジメントスキルの向上という点で、レンタル移籍は結構いいのかもしれない。そんなことを思いました。


レンタル移籍者たちの手記

企業間レンタル移籍プラットフォーム「ローンディール」は 大企業の人材をベンチャー企業のプロジェクトに参加させる仕組み。 働きなれた組織を離れて、未知のベンチャー企業に移籍した挑戦者たちは 何を見て、何を感じるのか。彼らの日々の記録。

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